研究項目A班:精密高分子の創出
公募研究 A05 次世代創薬モダリティーに向けた単一組成オリゴマーのライブラリー合成
研究代表者:大内 誠
(京都大学・工学研究科・教授)
専門分野:高分子合成
研究室HP
本研究では変換性モノマーの分子設計を工夫することで一分子(二分子)ラジカル付加の制御を可能にし,縮合剤などの反応促進剤・触媒に頼ることなくアルコール,アミンを添加するだけで側鎖変換し,この2ステップの繰り返しによって配列が制御された単一組成アクリルオリゴマーのライブラリー合成を達成する。後修飾反応を用いるために,疎水性基,温度応答性基,pH応答性基,相互作用基,など様々な特性に関与する側鎖置換基を導入しながら,側鎖置換基以外の一次構造が同一の分子をライブラリー合成できる点が特徴である。これにより,領域内連携を通じて単一組成オリゴマーの医薬展開を目指す。
公募研究 A05 糖鎖と合成高分子を主鎖で連結した非天然アミノ糖鎖の精密合成系の確立
研究代表者:甲田 優太
(筑波大学・数理物質系・助教)
専門分野:生体機能材料
研究室HP
生体適合性が認められて社会実装された合成高分子は数少なく、ポリエチレングリコール(PEG)が代表例である。水溶性があれば良いというわけではなく、生体適合性が認められる高分子の分子設計指針は未だに確立できていない。さらに、PEGが積極的に生体内で機能して疾患治療に繋げることは現状では難しい。そこで本研究では、生体内で機能する新たな合成高分子の創出に向けて、糖鎖とポリオキサゾリンが主鎖で連結した高分子の精密合成系の確立を目指す。代表者は、これまでに単糖の1,2位に2-メチル-2-オキサゾリン(MeOx)の環構造を組み込んだ糖質モノマーを用いて、新しいカチオン開環重合系を開発し、N-1,2-グリコシド結合で連結された非天然オリゴアミノ糖の合成を実現してきた。本研究では、精密イオン重合系の確立を図るだけでなく、計画班と協力して分子量が完全に規定されたものに分別した後、自身で分子量ごとに物理化学的性質だけでなく、生体毒性評価をin vivoで明らかにすることを目指す。
公募研究 A05 完全シークエンス制御と共重合制御を両立する超高速フロー精密高分子合成
研究代表者:鐘 顕鋳
(北海道大学・高等教育推進機構・助教)
専門分野:有機合成
研究室HP
生体分子では、タンパク質やDNAに見られるように、その機能はモノマー配列(一次構造)によって精密に規定されている。この配列―機能相関に基づく分子設計は、機能性分子創出における基本原理として広く認識されている。一方、合成高分子は高い構造多様性と機能拡張性を有するものの、モノマー配列の精密制御が困難であるため、配列と機能を直結させた分子設計は大きく制限されている。
本研究では、フローマイクロリアクターを基盤とした高速イオン付加重合を高度化し、一分子単位での逐次付加による完全シークエンス制御と、高速共重合における配列設計を統合した新たな高分子合成手法の確立を目指す。高速混合、精密な滞留時間制御、反応の即時停止(フラッシュクエンチ)といった特長を活用し、反応初期過程の速度論解析に基づいてモノマー反応性を定量化することで、理論に基づく共重合設計を実現する。
さらに、連続モノ付加反応および逐次添加技術を組み合わせることで、完全シークエンス制御オリゴマーから配列制御高分子までを一貫して合成可能なプロセスを構築する。これにより、配列と機能が直結した多様な高分子を系統的に設計・合成し、高速に高分子ライブラリーを創出する。
公募研究 A05 中性求核剤駆動型リビング重合法を基盤とした次世代創薬モダリティーの創出
研究代表者:藤本 隼斗
(大阪大学・大学院工学研究科・助教)
専門分野:有機合成化学
研究室HP
本研究では、申請者が独自に開発した「中性求核剤駆動型リビング重合」を基盤として、配列・重合度・キラリティーを自在に制御した精密高分子合成法を確立し、次世代創薬モダリティーの創出を目指す。従来のラジカル、アニオン、カチオンを活性種とする重合は、高分子合成において大きな発展をもたらしてきた一方で、停止反応や連鎖移動、副反応の抑制という観点から、さらに精密な制御法の開拓が期待されている。これに対し、本手法では中性求核剤がモノマーに選択的に作用し、分子内連鎖移動を経て末端に中性求核剤が再生する独自の機構により、特定モノマーとのみ反応する高度に制御された重合場を構築できる。本研究ではこの特長を活かして精密高分子ライブラリーを創製し、A班の分離分析技術、B班の計算科学・機械学習、C班の分子進化工学、D班のスクリーニング・疾患治療技術と連携することで、精密高分子医薬への展開を図る。
公募研究 A05 未開拓活性種メチルラジカルを駆使した精密高分子創薬
研究代表者:嵯峨 裕
(大阪大学・大学院工学研究科・助教)
専門分野:有機合成化学、電気化学、光化学
研究室HP
深刻なエネルギー・環境問題を背景に、地球上に豊富に存在する資源を活用し、再生可能エネルギーを駆動力とした持続可能な創薬モダリティー創製技術の確立が求められている。本研究では、私が世界に先駆けて開拓している「活性種メチルラジカルの利活用」を基盤技術とし、汎用高分子ポリオレフィンの自在修飾、精密高分子の拡張、さらには創薬モダリティーへの展開を目指す。ポリオレフィンを構成する化学的に強固なC(sp
3)–H結合およびC(sp
3)–C(sp
3)結合の変換可能とする、独自の光/電気駆動触媒設計を研究の基軸とする。これにより、従来のモノマー重合では構築が困難であった修飾ポリマーを合成し、領域内の共同研究を通じて、その官能基を足掛かりに機能性生体分子(医薬・抗体・ペプチド・蛍光材料等)を導入する。最終的に、精密高分子創薬モダリティーを劇的に拡張し、新たな創薬・治療の潮流を創出する。
研究項目B班:精密高分子のデータ駆動進化システム創生
公募研究 B04 精密高分子界面の創製:分子量・配列及び密度・配向が規定された超精密界面構築
精密高分子医薬の発展において生体分子との特異的な相互作用の場となる材料界面の精緻な制御と理解は重要な役割を担う。本研究では、分子量と配列が完全に規定された精密高分子を基盤とし、さらに界面における分子鎖の密度・配向までを制御した精密高分子界面の創製を目指す。精密高分子の設計と高分子の表面修飾に関する化学を融合することで精密高分子界面の合成法を確立する。さらに、この界面を対象に物性評価や分子間相互作用解析を進める。Materials DXや精密高分子の構造決定法及び分子間相互作用解析との融合を加速することで、精密高分子医薬の実現に向けた解析プラットフォームを構築する。
公募研究 B04 ナノポアを用いた高分子配列情報逐次解析技術の開発
研究代表者:竹内 七海
(東京農工大学・学内共同利用施設等・特任助教)
専門分野:ナノバイオ工学
研究室HP
合成高分子や天然高分子は多様なモノマー組成・ブロック長・分岐・末端修飾を有し、その構造が機能と密接に関係している。そのため、分子ごとの配列情報や微細構造を精密に読み取る手法の開発が求められている。本研究では、高分子をDNAと結合させ、ナノポアと呼ばれるナノスケールの孔を通過させる際に生じるイオン電流変化を利用して配列情報を読み取る。ナノポアは単一分子をリアルタイムに検出でき、通過時の電流変化が分子の構造や配列の違いを反映する点に特徴がある。ヘリカーゼなどの酵素によりDNAを1ステップごとに移動させることで、DNAに結合した高分子の逐次的なナノポア内移動を実現する。本手法は核酸やペプチドの解析で発展してきた技術を基盤としており、これを高分子へと拡張することで、モノマー配列の逐次識別を実現する。
公募研究 B04 AI駆動型高分子設計によるA2A受容体標的化結合体の開発
研究代表者:Tran Phuoc Duy
(東京科学大学・生命理工学院・助教)
専門分野:生物計算科学
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本研究は、人工知能および分子動力学シミュレーションを統合することで、アデノシンA2A受容体(A2AR)を特異的標的とする精密ポリマー設計のための革新的な計算フレームワークの確立を提案するものである。A2ARのアロステリックネットワークおよびGタンパク質選択性に関する我々の知見を基盤として、相補的な2種類の合成精密ポリマーを開発する。(1) 高親和性でA2ARに結合する、配列が厳密に制御されたポリアクリルアミド系オリゴマー、(2) 膜適合性を有し、A2ARのアロステリック調節を可能にする修飾キトサン誘導体である。A2ARシグナル伝達機構および構造解析に関する我々の豊富な専門知識と、最先端の計算科学的手法を融合することで、本研究は構造指向型ポリマー設計の新たなパラダイムを創出する。本研究は、合成高分子化学とA2AR薬理学の間に存在する重要なギャップを埋めることを目的とする。
公募研究 B04 大規模言語モデルとタンパク質データ科学を用いた精密高分子医薬品のデザイン
研究代表者:千見寺 浄慈
(名古屋大学・工学研究科・助教)
専門分野:生物物理学
研究室HP
近年著しい進歩を遂げている大規模言語モデルやタンパク質データ科学を応用して、標的タンパク質と強く結合する精密高分子の予測・設計手法を開発する。低分子やペプチドとタンパク質の結合に関するデータは大量に蓄積されており、これらを統一的に学習することで分子とタンパク質の相互作用における共通原理を獲得し、データの少ない精密高分子の結合予測に転移学習を通じて活用することを目指す。また、既知のタンパク質複合体構造を出発点として、結合界面の重要な側鎖情報を保持しつつ主鎖をペプトイドに置換する設計戦略にも取り組む。さらに、ベイズ最適化等を用いた能動的な配列探索により、精密高分子に強く結合するペプチドや抗体の配列を効率的に最適化する体制を領域全体と連携して構築する。これらの計算科学的アプローチを統合的に推進し、精密高分子医薬のデータ駆動設計基盤の構築を目指す。
研究項目C班:精密高分子の共進化システム創生
公募研究 C04 非天然ランダムタンパク質ライブラリ創出に向けた人工遺伝暗号表の開発
研究代表者:市橋 伯一
(東京大学・大学院総合文化研究科・教授)
専門分野:合成生物学
研究室HP
タンパク質医薬の高機能化には、天然の20種アミノ酸にはない化学特性を持つ非天然アミノ酸の導入が鍵となる。しかし、従来技術では限られた位置への少数の非天然アミノ酸導入しか実現できておらず、さらなる高機能化には、複数の非天然アミノ酸をランダムな位置に組み込んだ非天然タンパク質ライブラリからの進化的選択が必要となる。本研究では、再構成翻訳系における遺伝暗号拡張技術と、申請者らが開発した完全in vitroでのアミノアシルtRNA合成酵素の人為進化技術を統合し、複数種の非天然アミノ酸をタンパク質のランダムな位置に導入できる革新的な人工遺伝暗号表を構築する。
公募研究 C04 非天然ペプチド医薬品の創製を指向したリボソームの再設計
研究代表者:小坂 唯心
(大阪大学・大学院工学研究科・助教)
専門分野:合成生物学、遺伝暗号拡張、リボソーム工学
研究室HP
本研究の目的は、非天然モノマーを自在に重合し、従来の技術では合成困難だった次世代バイオ医薬品を創出する基盤技術を確立することである。申請者は、その実現のボトルネックであるリボソーム改変を可能とする、世界初の「試験管内リボソーム生合成法」を確立している。本研究では、この独自技術を発展させ、特定の非天然モノマーを高効率で翻訳する人工リボソームを創出する進化系を確立する。これにより、これまで探索困難だった広大な精密高分子空間を開拓し、次世代バイオ医薬品の創出を加速させる。
公募研究 C04 精密糖鎖修飾脂質ナノ粒子の創製とナノDDS医薬への応用
研究代表者:真栄城 正寿
(北海道大学・工学研究院・准教授)
専門分野:マイクロ化学・分析化学
研究室HP
細胞表面を覆う糖鎖は、細胞間の認識、ウイルス感染など、生命の根源的な認識現象を司る「顔」として働いており、様々な生命現象に関わっている。そのため、肝細胞に高発現するアシアロ糖タンパク質受容体を認識するN-アセチルガラクトサミンと核酸やナノ粒子とのコンジュゲート製剤などが開発されており、糖鎖による修飾技術は次世代医薬に不可欠である。しかし従来の化学的な修飾方法では、糖鎖の配向や数を精密に制御できず、機能が十分に発揮されない課題があった。そこで本研究では、マイクロ流体技術、脂質ナノ粒子(LNP)、タンパク質工学、無細胞合成系を融合することでその課題を突破する。本研究を通じて精密糖鎖高分子薬物送達技術(DDS)の基盤を確立する。
研究項目D班:精密高分子の医薬応用
公募研究 D05 リピートRNA上でケミカル伸化する超小型核酸医薬の開発
研究代表者:森廣 邦彦
(東京大学・大学院工学系研究科(工学部)・准教授)
専門分野:核酸化学
研究室HP
リピートRNAはCAGなど特定配列が異常に伸長したRNAであり、ハンチントン病や脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患の原因とされる。これらは神経細胞内でRNA結合タンパク質と凝集体を形成し、細胞機能を障害することで発症に至る。本研究では、特定配列を認識する超小型人工核酸を設計・化学合成し、長鎖リピートRNA上で化学的に伸長することで高親和性結合を実現する。これにより、リピートRNA由来の凝集体を選択的に解消する新規核酸医薬の開発を目的とする。さらに、試験管内、培養細胞およびマウスモデルを用いた機能評価を通じて有効性と安全性を検証し、難治性神経変性疾患に対する新規治療戦略の創出を目指す。
公募研究 D05 RI標識精密高分子を基盤とした進化型ラジオセラノスティクスの創成
研究代表者:小川 数馬
(金沢大学・薬学系・教授)
専門分野:放射性薬品化学・セラノスティクス
研究室HP
化合物の生体内での動態を非侵襲的に定量する手法として核医学イメージングは適している。本研究では、他の班で見出された「精密高分子」に放射性同位元素(RI)を効率的に導入し、培養細胞などのin vitroでの評価に加え、マウスを用いたPETやSPECTなどの核医学イメージングにより体内動態や標的臓器への集積を経時的・定量的に解析する。得られた知見をもとに、高分子やRI導入部位の構造を改変して、標的組織への移行性を高める一方、非標的組織への不要な集積を抑え、排泄性を含めた体内動態の最適化を目指す。さらに、診断用RIに加えて、At-211やAc-225などの治療用RIを導入し、診断と治療を一体化した「ラジオセラノスティクス」へと発展させる。本研究により、精密高分子の構造と体内動態の関係を体系的に理解し、がんのみならず、多様な疾患に応用可能な新しい創薬モダリティの創出を目指す。
公募研究 D05 超効率な標的タンパク質分解を実現する分解特化型精密分岐ユビキチン鎖の創出
研究代表者:古畑 隆史
(東京大学・大学院工学系研究科(工学部)・助教)
専門分野:生体機能関連化学、ケミカルバイオロジー
研究室HP
ポリユビキチン鎖は、翻訳後修飾として多様な生体反応の制御に採用されるユビキチンの重合体である。特に、K48とK11、K29で枝分かれをしたK48/K11、K48/K29分岐鎖は、プロテアソーム経路を介した基質タンパク質の強力な分解誘導因子である。そのため、ユビキチン創薬において強力な標的分解の実現に適したトリガーとして注目されている。しかし、K48/K11、K48/K29分岐鎖を、機能の変動を抑えながら、強力な分解誘導剤として広範な疾病組織や細胞に適応するための方法論は確立されていない。本研究は、分解誘導能に関する構造機能相関の学術的理解とユビキチン鎖の精密エンジニアリングに基づく、「分解特化型精密分岐ユビキチン鎖」の開発を目指す。さらに、その非酵素的な修飾により内在のユビキチン化機構に依存しない強力な標的タンパク質分解法の確立へ展開する。以上から、難治性疾患治療に資する「精密高分子分解誘導剤」の新規設計基盤と応用戦略を打ち出す。
公募研究 D05 動的特性を有する超分子ポリマー:ポリロタキサンの精密合成法の開発と医薬への応用
研究代表者:田原春 徹
(熊本大学・大学院生命科学研究部(薬)・助教)
専門分野:薬物送達学 製剤学
研究室HP
抗体医薬品の生産コストや安定性の懸念を解消する新規創薬プラットフォームとして、プラスチック抗体が注目されている。特に、分子量や官能基の配列が一義的に規定された精密高分子型のプラスチック抗体は、医薬への応用に期待されているが、ナノ粒子などの足場に複数導入し、抗原との相互作用を増強させる必要がある。本研究では、軸分子に沿って環状分子が回転・移動できるユニークな特性を有する数珠状の超分子ポリマー: ポリロタキサン (PRX) の動的特性に着目し、その精密合成法を確立することで、精密高分子の高機能かつ精密な足場を開発し、均質かつ機能性の高い人工抗体を創成することを究極の目標とする。